『次やったらお前はクビだ。』と言われてから約4年経つ。
4年前僕はある飲食店にバイトとして入った。バーも付いているということでかっこいいなって思ったから。
ホストやキャッチ系の夜の仕事は僕には向いていないので、バーテンダーならできるかなって安易な考え。
『おはようございます!』と言って店に入ったのは始業5分前、あんまり使わない電車の路線だったので間違えて反対方向に乗ってしまったから。
素直に伝えたら怒られることもなかった。
飲食店でのバイト
それから働き始めてすぐにみんなから嫌われた。
正直びっくりした。大学生やもっと上の年の人がいるにも関わらず、こんなにも嫌いという感情が分かるような行動をとってくるんだなと。。。
嫌われた理由はなんなのだろうか?こういった自分でも分かっていないのがいけなかったのかもしれない。
たまのシフト人数が少ない日はみんなでバーベキューや飲みに行ってたりして、僕が穴埋めをしていた。
もちろん快く受け入れていたわけじゃない。しらなかっただけ。のちのち聞いてそうだったんだと知った。
そんな僕でも仲良くしてくれる人ができた。A氏とでもしようか。
もともとバーベキューや飲み会に参加していたメンバーだったけど、僕を気にかけてくれたみたいだ。嬉しかった。
よくA氏と飲みに行くことが増えた。A氏は酒を飲むと少しナルシストになるようだ。男ならわかるだろ?理性が少し外れてしまうみたい。
男の僕にとってなんの不利益にもならないから、飲んでいる時はそんなキャラも含めて楽しかった。
A氏の誘い
ある日『バイトの女の子2人と飲んでるから来ない?』と電話がかかってきた。もちろんA氏だ。嫌われていたので誘われただけでも嬉しかった。
でもその時は違った。少しだけ、ほんの少しだけ返答に迷った。ただ僕は何か打ち解けれるものことがあるんじゃないかなと思って行ったんだ。
『やっほ!』と声をかけてくるバイトの女の子。3人で飲んでたみたいで特段盛り上がっている様子ではなかった。
僕は3人きょうだいの末っ子。人の行動や目を気にしていつも顔色を窺っていたせいか、その場所で不穏な空気を察した。
『あたし○○さんと付き合ってるんだ!』と…死んだ。かなりまずいと思った。
○○さんとは先輩のことで、バイトを牛耳っているバイトリーダー的存在の人。Bさんとでもしとこう。黒い噂もあり危険な存在だと誰もが知っていた。
その彼女と飲み…。冷静を装う。
『いまからBさんに電話かけるね!』と彼女は言う。意味が分からなかった。人が取る行動とは思えなかった。
そもそも僕が嫌われ始めたのはBさん発信。今彼女が嫌いな人と飲んでいることを知って良い風に捉えるだろうか?ましてや暴力的で危険な人。
すでにかけていた。『はい、出てね💛』と一言。短時間でこんなに意味わからないことが起きるだろうか?
僕がなぜBさんとやり取りしなければならないのだ。まだ死にたくない。でも、もう電話は繋がっていた。
僕『もしもし…バイトの…』
B氏『あ、○○くん?俺の彼女酔ってないかな?』
僕『酔ってないと思います。あの…酔ってないです。』
B氏『酒癖悪いから飲ませないようにしてねー。』
僕『かしこまりました。』
人生楽しませてくるなぁと思った。彼女曰くどうやら嫉妬させたかったみたい。それが僕ですか?
またかよ…さらに嫌われて働きづらい環境が生まれる。どうして僕はいつもこうやって扱われやすい位置にいる人間になってしまうのだろうか。
次の日B氏は僕に血管が切れるんじゃないかというくらいキレてた。
あーあ、ヤバい人だと感じつつ、見るに耐えかねた料理長が割って止めてくれた。営業中じゃなくて仕込み中の出来事。
僕も怒ってた。怒りは何に対してなのかわからないけど、怒ってた。とてつもなく。
クビ宣告
時が過ぎるとそんな出来事もまるでなかったかのように消し去られた。
そんなある日…僕はラストオーダー間際7名様の接客をしていた。
僕『まもなくラストオーダーです。ご注文ございますでしょうか?』
お客様『ガトー、ガトー、ミルクレープ、抹茶アイスごちゃごちゃごちゃごちゃ。』
僕『すいません。まとめます。ガトーが3つ、ミルクレープ、抹茶アイスが2つでよろしいですか?』
お客様『はーいもってきてー!』
僕『かしこまりました。』
ー数分後ー
僕『お待たせしました。お間違いないでしょうか?』
お客様『はーいwwガトーショコラ1個足りなーいwwww』
僕『大変申し訳ございません。すぐにご用意します。』
ータッタッター
僕『すいません料理長。ガトーショコラが注文ミスで一つ足りませんでした。もう一つ作って頂けませんか?』
料理長『あ?ラストオーダー終わってるぞ。間違えるなよ。』
僕『すいません。』
ータッタッター
僕『大変お待たせしました。ガトーショコラです。』
お客様幹事『キミさ、接客態度なってないよ。感じ悪いし、オーダーミスするし。名前教えて。』
僕『はい、すいません。○○です。』
ー閉店後ー
店長『お客様からクレーム貰ったんだけど、何したの?』
僕『すいません。オーダーが…(事情説明。)』
店長『名指しクレームは久しぶりだよ。キミは相当なことしたんだよきっと。態度に出てたんだ。だからお客様に指摘されたんだよ。』
僕『はい…。』
店長『次やったらクビね。性格は治らないから。』
ちーん;;
今思い出しても泣きそう。確かにイラっとしていた自分がいたかもしれない。他人からみて不愉快な態度だったのかな…。
それでも続けた結果
翌年やはり仕事仲間とはうまく行かず、違う店舗に飛ばされた。
それから僕はバーテンダーとしてカウンターでお客様と話してみたかったので、僕なりに仕事を頑張った。
とりあえずはホールの仕事ができないとバーの仕事はできないからだ。ほとんどの場合、先輩や店長がバーに入る。
カウンターでお客様に一番近い場所。あの場所は聖地だ。接客や技術もままならない新人が入ってもお客様をしっかりともてなすことができないから。
ー数ヶ月後ー
僕はその店で店長になった。上手くコミュニケーションをとれなかったメンバーはバイト間のトラブルでクビになったそうだ。
バーにも立てて、それなりのパフォーマンスもできるようになった。三流だけど。
バーに座るお客様は相変わらずマルチ商法の勧誘が多かったけれど、いろんな人とお話できて楽しかった。
『性格は治らないから。』という自論をぶつけられて今でも確かにと思っている。
なぜならあの一件を全く僕は反省していないからだ。おそらくあの時酔っ払いに僕はキレてたのだろう。
僕が身に着けたのは、いいお客様か悪いお客様なのか判断する力と接客力。人生で役立てられているから良かったと思っている。
とりあえず、クビにならなくてよかった。もしバイトをクビになっていたら人生で2回目のクビになるとこだったからね。